【書評】マンガで分かる心療内科 依存症編 酒タバコ薬物(ゆうきゆう原作/少年画報社)

禁酒本レビュー

マンガで分かるシリーズの依存症編のご紹介です。有名な精神科医ゆうきゆう先生が原作の漫画です。お酒・たばこの依存に関するお話をコミカルに教えてくれます。

禁酒もしくは禁煙をしようかな…と考え始めた人は、一番最初に読むのにおすすめです。禁酒・禁煙の本はたくさん発売されていますが、300ページとか活字があると気が重いという方も、この漫画なら、軽い気持ちで読み始められるかと思います。

青い表紙は酒・タバコ・薬物の依存症がテーマ、赤い表紙はゲーム・ネット・スマホ等の依存症が主なテーマになっています。

私はスマホ依存もあるので両方読んでみましたが、このサイトに来てくださった皆様は、まずは青い表紙の方を読んでみればそれでOKかと思います。

依存症を見分けるたった一つの質問

依存症の中でも特にアルコール依存症は「否認の病」と言われます。「自分は依存症などなっていないし、上手くコントロールしてお酒とは付き合っている」「別にいつでもやめようと思えばやめられるさ」といってお酒を飲み続ける人のなんと多いことでしょうか。

依存は「やめたくてもやめられない」状態のことをいいます。

なので、依存症になっていないというのであれば、今から1週間お酒をやめてください」という質問に対して「はい、わかりました」と答えられるはずです。

依存症になっている人は、どれだけ調子のよいことを嘯いていても、この質問に素直に「わかった」と答えることはできません。何やらかんやら言い訳をしたり、言い逃れをして、お酒を飲む理由をどこからともなく探してきます。まさにそれこそが「依存症」です。

酒・タバコを使うと気持ちが落ち着く…?

ストレス解消のために、酒・タバコが必要だという方も多いです。しかし、よく考えてみてください。酒もタバコも使わない人はどうやってストレス解消しているのでしょうか。他の何かにハマっているのでしょうか。では、何にもハマっていない人は毎日ストレスフルな日常を過ごしているのでしょうか。

何なら、お酒やタバコを使う人の方が、酒やタバコが切れてしまったと言ってイライラしていることも多く見かけませんか?

酒やタバコが解消できるストレスは、「酒やタバコが切れたときのストレス」だけです。

人生には「仕事」「家族関係」「恋人」等々、諸々のストレス源があります。お酒を飲む人はこれに「酒」というストレス源が増えるだけです。そのほかのストレスが解消されるわけではないのです。

つまり、酒やタバコでストレス解消できている、というのは錯覚だったのです。

依存症になると他の喜びが感じられなくなる

お酒のデメリットは多々あるかもしれないけど、仲の良い友人との飲み会は楽しいじゃないか、という反論があるかもしれません。

しかし、それは「仲の良い友人」と過ごしているから、その時間が楽しいだけです。お酒のおかげで楽しいわけではありません。実際、嫌いな上司との飲み会は苦で早く帰りたいはずです。その場にもちろんお酒はありますよね、お酒があっても嫌な人との時間は嫌になります。お酒が楽しさを作っているわけではないのです。

悩んでいるときにお酒を飲んで寝てしまえば、少し気が楽になるだろう、といった反論もあるかもしれません。しかし、これは端的に「時間が経ったから」楽になっただけではありませんか。お酒が楽にしてくれたわけではありません。錯覚です。

意志が弱いからやめられないのではなく強い意志で飲む選択をしてる

お酒をやめようとしたとき出てくるのが「意志が弱いからやめられない」という言葉です。

しかし、酒税は増税してどんどんお酒の値段も高くなっていてもったいないし、健康に悪いってわかってるし、時間がなくなって家族が白い目で見てきて気まずいし、もうやめたいという自分の気持ちも嘘ではないし…とこれだけお酒をやめるべき理由がある中で、それでも飲む人がいます。

意志が弱いから飲んでしまうのではなく、むしろこれほどまでに飲まない理由がたくさんあるのに、全部無視してまで飲む、という強い意志を感じざるを得ません。かえって意志の力が強いくらいではありませんか。本人が強い意志で「お酒をやめない」という選択をしているのです。

「わかっちゃいるけどやめられない」のではなく、自分の状況がわかっておらず、無知だからやめられないのです。お酒でストレス解消できているといった錯覚や勘違いから覚め、自分が何で飲んでいるのか知ることから始める必要があります。

周囲の人がイネーブラーになっていないか

周囲の人が気づかずに、依存の手助けをしてしまっている場合があります。

依存症の本人が酒を飲むために借金をしたら、それを代わりに返してあげたり、二日酔いで倒れていたら代わりに会社へ連絡してあげたり、迷惑をかけた近所の人へお詫びの挨拶を入れたり…

一見、良き家族かと思えますが、これはこれだけやらかしても飲み続けられると本人が学習をしてしまい、さらに依存にのめり込ませてしまいます。

さすがに生死の危険まで起こるような身体的不調の場合は助けるべきですが、そうでもないレベルであれば、そのまま放置し、本人をしっかりと困らせることが抑止の一つになります。自分の飲酒の結果、周りの人や家族を困らせた事実を本人に認識させましょう。本人が寝ている間に全部綺麗に片づけてしまっては、自らの迷惑さを本人が認識するきっかけを奪ってしまいます。

また、周囲の人が責任を感じてしまったりすると、依存症本人が他責をエスカレートさせてしまいます。「自分が飲んでるのはお前がうるさいせいだ」といった具合に、依存者は人のせいにすることが多いです。

優しい人は、そう言われて(自分のせいでこの人はこんなになってしまったのかもしれない…)と責任を感じてしまいがちです。しかし、それは変えるべきです。依存者本人はそれをいいことにさらに責任転嫁をして、より依存に向かっていくことになってしまいます。

依存をやめるのは一度しかない人生、充実した時間を過ごすため

依存から抜けたら楽しみがなくなるのが怖い…と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、依存から抜けられた人のほとんどが「気分がすごくよい」「自由になれた」と述べています。

なぜ依存から抜けるべきなのか。それは本来の自分に戻って、一度しかない人生で、充実した時間を過ごすためです。

全体を通して、コミカルに依存の怖さやそこから抜けることのメリットを説いてくれているマンガでした。おもしろく楽しく読めるマンガです。気になる方はぜひ読んでみてくださいね。